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中小企業の経営者に役立つ記事を書いていきます。

想定外のリスクに対応するためには

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インディビジュアルコンテンツの代表の本藤(ほんどう)です。今回は「想定外のリスクに対応するためには」というテーマでお話しします。前回に続いて、リスクを取り上げます。よろしければ、前回書いたものも、合わせて読んでいただければと思います。
(本稿も、コロナウィルス対応ではなく、一般的な危機対応について論じています)。

 

kikaku1.hatenablog.com

 

1.  ブラック・スワンとは

ブラック・スワン」は、存在しないものの概念として、古くから哲学者に使われてきた言葉です。しかし、オーストラリアで黒い白鳥が発見されたことで、「白鳥は白い」という、これまで当たり前だった前提が、根底から覆されます。「ブラック・スワン」という言葉は、ナシーム・ニコラス・タレブの著書「ブラック・スワン」によって、よく知られるようになりました。タレブは、「ブラック・スワン」の特徴として、以下の3つを挙げています。コロナも、これに当てはまるでしょう。

 

① 起きる可能性が非常に低いこと、異常であり、すべての人にとって、想定外であること
② 「ブラックスワン」が起きると、甚大で深刻な影響があること
③ ひとたび起きると、人間は、その異常さを忘れ、予測可能であったかのように振る舞うこと

 

ブラックスワン」が起こった時の衝撃は、日常で起こる出来事に比べ、とてつもなく影響が大きいので、企業戦略を考える上で、極めて重要と言えます。「そんなことできる訳ない」という声が聞こえてきそうですが、自社にとっての「ブラック・スワン」を想定し、対応を考える方法はあります。以下に紹介します。

 


2. ブラックスワンを考える方法 I ー シナリオプランニング

 

最もよく知られているのは「シナリオプランニング」という方法です(Google等で調べれば、すぐに出てきます)。簡単に言えば「もしもの場合(What if)」を考えることです。考える切り口として、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、テクノロジー(Technology)(頭文字を取って「PEST」という、あるいは環境(Environment)を加えてSTEEPともいう)が、よく使われます。これらの社会的要因について、(例えば「北朝鮮民主化すれば」とか「日本の人口が2割減少すれば」のような)シナリオを想定し、自社にどう波及するかを考えます。

 

シナリオプランニングで最も有名なのは、1970年代初期のシェル石油(現 ロイヤル・ダッチ・シェル)の事例です。同社は、石油価格の長期的なシナリオを予測し、石油価格の高騰を事前に想定することで、その後のオイルショックを乗り切りました。同社は、今も、シナリオプランニングを経営戦略の策定に用いています。

 

将来の予測は、多かれ少なかれ、ほとんどの会社が行っていると思いますが、具体的な対応まで突き詰めて考えているケースは少ないと思います。特に、日本経済が低迷期に入ってから、将来を見据えた意思決定は、格段に難しくなった感があります。また、優良企業ほど、過去の成功体験が、未来を予測する力を鈍らせている面もあると思います。

 

私の経験では、将来の予測に関する議論はうまくいかないことが多いです。予測は、ある程度、データから傾向を分析する必要がありますが、そもそもデータの扱いに慣れている人は少ないです。人間は、過去の経験から未来を予測しようとする傾向が強いため、うまくデータを使えないと、シナリオの構築が偏ったものになりがちです。そういうこともあって、私自身は、この方法はあまりお勧めしません。

 


3. ブラックスワンを考える方法II ー 自社の弱みに着目する

 

もう一つは、自社の「弱み」に着目して改善していく方法で、私が、経営相談等で使っているものです。経営者の方とお話をしていると、自社の「強み」については、とても生き生きとお話をされるのですが、「弱み」となると、はっきりお答えになる方は、あまり多くありません。「強み」は、過去から築き上げたものであり、ある意味、その会社の「現在の姿」です。一方、「弱み」は、これまで、その会社があまり力を入れてこなかったことであり、盲点になっていることが多いのです。しかし、「弱み」が、新規事業や事業拡大を行う上で、ボトルネックになることがよくあります。想定外が起こった時も同じで、問題になるのは、その会社の「弱み」の部分であることが多いのです。


分析手法も、ごくごくシンプルなSWOT分析です(さすがに説明は不要と思います)。ここでは、SWOTのW(weakness: 弱み)とT(脅威: Threat)を使います。WとTが重なると、企業にとって致命的な影響をもたらすことがあります。WとTの組み合わせを考えることで、どのように「弱み」を改善ずべきかも見えてくると思います。この方法は、自社の分析から始めるので、シナリオプランニングよりも、取り組みやすいと思います。

 

 

出典・参考文献

ブラック・スワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著、望月衛訳、ダイヤモンド社)
「シナリオ・プランニング」(ウッディー・ウェイド著、野村恭彦(監訳)、関美和訳、英治出版